アジアの途上国自立支援の一環として始めたニームGreenプロジェクト。
現地で行う実験の進行状況を記録するためにまとめてみました。

2010年1月20日水曜日

2010年1月ニーム実験スタート!

2010年1月16日~

カンボジアでも、ニーム(現地語:スダウ)の実験が始まりました。

バンテアイスレイにある実習ファームも、地元の協力NGOサポーターやPCO孤児院と、順調に進展しています。(詳しくは、自立支援ブログをご覧下さい)

ファームの土地には、バナナや、地元のイモ類は何とか育っているものの、全体のほんの一部です。相変わらず、土は砂地で蟻が大量にいて、思うように作物は育ちません。

現地から、ヒマラヤの塩を使った(?)天然肥料を施してもいいか、という相談もありましたが、一緒にニームの研究をしてみないか、と提案。わざわざヒマラヤからの塩を使わなくても、カンボジアにも有効な天然資源はあるはずです。

しかし、スリランカの人がそれを笑ったのと同じように、カンボジア人も、「スダウを育てる?そんなものそこら中に勝手に生えているし、農業に役立つ話なんか聞いた事ない」と笑います。


「そんなあなた達こそ、世界で笑われているかもよ。こんなに、資源が豊かにあるのに何も役立てていないで貧乏だと言ってる。」

毎回、何かやろうと言うと、必ずこんなやりとりになりますが、それでも互いに意見が言い合えるようになったことは嬉しいことです。

「とにかく、やってみよう。肥料はちょっと待って欲しい。具体的なことは行ってから説明するから...。」そんなやり取りをして、今回の訪問を迎えました。

来てみてびっくり!PCO孤児院のスンタンさん(代表者)が、遠くの村からスダウの葉っぱを米袋10袋分用意し、しっかり乾燥させて待っていました。

「その辺にある」、とは言うものの、じゃあすぐもってきてと言ってもその辺にないのがカンボジア。あらかじめ色んな予測を立て、スリランカからニームの葉や種、日本のニーム製品などを持参して、いろんな状況を想定し対応できる準備を整え、なんとか説明をして試してみせるつもりでいました。

ところが、現地に行くと、しっかり地元のスダウがきれいに乾燥されて準備万端!!当初は、その辺にあるという割りに、買わなければいけないと言っていましたから、そんな訳ないでしょ~、だったら植えようよ!と、メールのやり取りの段階では、あきらめていましたから。

・・・そう、私達の知るカンボジア人は、最初からあきらめるか、お金をかけて(私達が払う)何とかしようとするかのどちらかばかり、というイメージしかありません。今回は名誉挽回です。葉っぱがふんだんにそろっていたので、さっそく実験に取りかかれます。


<実験の様子>


今回の実験は、日本で販売されているニームの粉状乾燥葉を、土壌改良として使う方法を参考にさせてもらいました。

製品ほど、細かくカットできませんが、子ども達の小さな手でできるだけ小さく揉んでもらいました。

参考にした分量のニーム葉を、計量した水とアルコールに浸します。アルコールや焼酎を入れると、成分の抽出力がアップするそうです。
カンボジアの薬局から手にいれた消毒用アルコールですが、なんだか臭いはウォッカのような、酔っ払いそうな、何ともいえない臭いでした。(大丈夫かな~)

炭で火をおこし、火にかけます。予定では、60-70%の水分量の原液が取れるということですが、乾燥した葉がしっかり水分を吸って、そんなに取れそうもない感じです。

自然に冷まして、一晩ねかす、ということなので、初日はここまで。翌朝出直し、いよいよニームをまきます!!

前日に残っていたアルコール臭はほとんどなくなり、葉っぱの底には濁った緑茶の液体が見えます。なんとか少しは液体が取れそうです。

枕カバーの古いものを使って、ぎゅ-っと絞ります。今回は、男性4人で思い切り絞ってもらいましたが、それでもなかなか力が加わりません。葉っぱを半分に分けて、もう一度小分けにしながら絞りなおし、なんとかそれらしき原液を抽出。

 次回は、葉っぱを袋にあらかじめ入れてから漬けるか、もっと大きな筒状の布に、両端に棒を入れて両方から反対方向に回して絞る方法を提案しました。

噴霧器が目詰まりしないよう、布でこしながら原液をボトルに貯めます。6-7リットル取れる計算でしたが、実際には5リットルぐらい。臭いはさわやかな感じで、うーん効きそう!?

希釈も正確に行ってもらうために、ペットボトルに目盛を付けて計量カップを作成。分量の原液を5ℓの目盛が付いた噴霧器に入れ、正確に目盛まで水を入れて希釈しました。

持参した噴霧器は、全部で4つ。①~④と印を入れ、栽培しているところだけではなく、土地全体にくまなくスプレーしてみることにしました。

結局、4つの5リットル噴霧器を、それぞれ3回空にして全体にスプレーが終わりました。

つまり、計12回分で、原液は300ml使いました。原液は、冷暗所に保存して1ヶ月以内に使い切ったほうがいいという情報ですから、カンボジアの暑さなら、それより早く使ったほうがいい。

また、乾季で湿度も高いので、2ヶ月間ぐらいは1週間に2回、継続して撒き続けてもらうことにしました。それなら、今回作った1回分の原液は、1ヶ月以内に丁度なくなりそうです。

 絞ったカスの葉っぱは、堆肥仕込み用の穴に半分、育ちが悪いマンゴーの木等の根元に半分撒きました。

(堆肥仕込み用の穴は、初日に大きめのを掘って、牛糞、わら、枯葉、生ゴミなどを入れ、熟成させてから肥料として使う方法を提案。)


<カンボジアのスダウ情報>

効果がどれほどのものか分かりませんし、だめにしてしまうリスクだってないとはいえません。スダウは、カンボジアに3種類あると言います。一般には2種類しか知られていないようで、一つは薄紫の花を付け、一つは白い花を付けるそうで、前者の方が苦い。もう一つは、とても苦い。昔からよく食べているらしいで す。

実は、今回の葉っぱ、なんだかスリランカのコホンバともちょっと臭いが違うみたいだし、葉は良く似ているけれど、同じものかは不明。スリランカでも、最初に手に入れたコホンバは、もう薬効が強いニンコホンバとは違うという情報も入ってきているので、不明です。

写真は、よく食べているという、スダウの花。今がその時期らしく、味は固くなり始めた菜の花のような感じで苦いけれど後味はすっきり。大きさや葉を見ると、やっぱりスリランカのとはちょっと違うみたい?

普通のカンボジア人は、スダウはその辺に勝手に生えてる(?!)し、その2種類は、いずれも身体にいいから両方食べるし、どっちがどっちか、あまり意識もしたことがないと言います。どちらも芽が膨らみ始めたら食べるそうで、マーケットに売られているそうです。非常に身近な植物であることは間違いありません。 また、鶏のえさとしても与えているらしく、だから鳥インフルエンザはないんだ、と村の人は言っているとか...。(?!)

自生するのも、鳥が実を食べてそこら中に種を空 中散布(つまり糞)してるから、紫のほうも、白いほうも、混在して生えていると思う。今回は、とにかくお金を使わなくてすむように、バッタンボンという所の知り合いに、何とか頼んで拾わせてもらうのに精一杯。それを意識してなかった。2時間ぐらい車を走らせたところで採ってきた。次は、ちゃんと見て採ってくる、 薬効の高い方のみ栽培するようにしたい、とのこと。

まだ効果も分からないし始まったばかりです。でも、あれこれと文句を言っていたカンボ ジア人ですが、参加したほとんどのカンボジア人は興味津々で、分量や作り方をしっかりメモしていました。こういうカンボジア人の姿を見ることは、あまりありませんでしたから、これだけでもやって良かったと思います。


<日本のスダウ情報>

日本の情報によれば、日本人が運営するニーム協会などもカンボジアにあり、植樹を行っているようです。ただ、そこの会員だという人(どこまでの関係 者か不 明)に偶然出会って話を聞いた日本人の話によると、カンボジアのニームなんか効かない、農業には効果ない、とのこと...。

何がどこまで本当の話なのかは分かりません。人から聞いた話は分からないものです。単なる噂なのかもしれないし、何か別に理由があってそういう情報の伝わり方をしたのかもしれません。いずれにしても、「やってみないと分からない」としか言えません。

ニームにしても、色んな説もあると思います。何をとってもそうです。良いと言う人もあれば、よくないと言う人もいる。何が根拠なのか。行動と体験が根拠なら分かります。それでも、その人の行動と自分のそれは異なるはずです。

行動はまず自分がやって、実験・研究を重ねて向上させることが必要だと思っています。カンボジアのこの実習ファームだけがこういう土なのか、その土に合うも のは何なのか、改善するにはどうしたらいいか...、やってみないと分からないことばかり。カンボジアに自生したり身近にあるもので、何かみんなの役に立 つものが発見できたらいいなと思います。

スダウが農業向きでなくても、ニーム協会さんがやっているように、植樹していけば砂漠化は食い止められるし、そんなによく食べているものならもっと増やせばいいし、買う人がいるのなら、孤児院の収入の一つにしてもいいのです。

今は、こうしてみんながやる気になり、協力しあい、正直に話ができる機会ができはじめたことを嬉しく思いますし、これを孤児院の子ども達に継承していきたいと思います。


<秘密兵器なるか!?スライン?>

さらに翌日(3日目)、改めてみんなで集まり、孤児院の年長者以上も一緒に、ニームを一般的に紹介した英語のビデオを見ました。更に関心を持った様子で、色んな案もでました。もう1つの種類のスダウは、一般には食べられないぐらい苦く、薬としか使われない古いもので、普通にはないと のこと。その情報も1人を除いては知りませんでした。もしかしたら、それかもね!と、みんなで話をし盛り上がりました。

そして、昔は、スダウとスラインとい う強烈な薬効のある木の種を水に浸し、苗の根っこを1晩漬けてから植えていたという情報もあり、最近では、政府もその古くからの方法を奨励しているらしいのです。孤児院のスタッフが、スラインを使った実験もやってみたいと手を挙げます。(いい感じ~)

そこで、今が丁度実のなる時期らしいので、スラインも手にいれ、みんなで調べたり実験してみようという話にもなりました。P.C.O孤児院が、真剣に取り組み、周りのカンボジア人も一緒に協力し合ってやろうとする姿をみるのは本当に嬉しいです。

まだまだ これから、じっくり時間をかけて実験を継続です。

次は、葉のスプレーをファームに施しつつ、孤児院内でニームの栽培を行い、スラインも試してみてそして、6月には、手動のオイル圧搾機を使って、種からオイルを作って実験を続けていきたいと思います。

乞うご期待!