アジアの途上国自立支援の一環として始めたニームGreenプロジェクト。
現地で行う実験の進行状況を記録するためにまとめてみました。

2010年4月10日土曜日

スリランカのニーム実験:研修第一期修了まで

2009年12月22日~2010年3月14日の期間で実施された、スリランカでの日本語学習&技術研修プログラムの第一期が修了しました。

3ヶ月の間、日本人ボランティアが日本語をはじめ、アジアの農村生活向上に役立つ、色んな日本の知恵・工夫、実験や研究、そして農業や大工に関する技術を紹介するなど、たくさんの学びがありました。

ニームの実験も、2月以降~研修の最後まで行い、母国に戻った4人のミャンマー人の学生は、数々の学びを持ち帰ることができました。母国では、引き続き研修が続行されており、優先課題もありますが、ニームの実験は継続し、母国のニームを研究し、将来実用化させたいということでした。

この研修は、非常に厳しい環境を生きてきた人々の中で、村全体の自立をリードできるような新しい力を育てることが目的です。村で中等教育までしか受けられなかった若者に、強い心を育て、創意工夫や勤労・奉仕の楽しさを教えることを学習の目的とし、それに必要な日本語を同時に学んでいます。(詳しくはこちら: NPO事業概要事業応援チームのブログ

3ヶ月間の研修中、ニーム、えひめAI(有用微生物)などを自作し、庭の畑や施設で実行可能な実験は色々ありました。ニームに関しては、前回お伝えした通り、「自分のたい肥作りとトウモロコシ栽培」という実習に、内容はともかくニームを使った研修生が何人かいたこと、共同の畑の土壌改良や虫除けに試用してみたこと程度ですが、実際には多くの過程をふみ、目的に対する成果はあったと思います。

『実験・観察』という初体験に挑戦し、いい(良い)加減?で、短い期間での実験ではありましたが、最後に、一人ひとり自分の観察記録を持ち寄り、『まとめ』をしてみました。限られた条件下で、厳密な実験結果ではありませんが、このディスカッションまでのプロセス自体が重要であった、ということでご了承下さい。

◆たい肥づくりとトウモロコシ栽培の実験のまとめ◆
まとめ:2010年3月14日

実験期間:2010年2月3日~3月12日(約5週間)



<感想・意見交換の内容>

●最初はどちらか分からなかったが、えひめAIとニームは相性がいいのではないかと思う。(放線菌が、たい肥作りの時3日程度ででてきた、えひめAI+ニームケーキを使った畝には、シロアリ、あり、アブラムシの発生がとても遅かったり少なかった)
●えひめAIは、分解を早くしてくれるので、ニームケーキの成分も、よく効いたのではないかと思う。
●ニームケーキを入れた方が、全体的に葉があおかった。
●生ゴミたい肥とニームケーキをいれたところは他よりよく育っていた。
●ニームケーキはいいと思う。
●全体的に大きく育たなかった。根も弱かった。虫のせいかもしれない。
●これまで田舎でやってきたように、腐葉土だけで栽培していたら、その効果は1週間ぐらいしかなかったと思うが、いろいろな材料でたい肥を作って畑をするのはよいと思う。
●牛ふんを入れるとアリがくる、アリが来るとアブラムシが多くなると思う。

虫が多くて、かなりダメージを受けた感じでしたが、それでもニームはいい、という感覚を全員がもっていました。
今回は、実験の途中で初めに自分で考えた進め方を変更せず、他と比較観察できるようにする、ということが課題でしたので、ニームが虫に効くかどうかという事ははっきり分からなかった...、でも、実験の畑以外で個人的に虫に試してみた学生もいて、「ニームはよさそう」というのが、全員の感想でした。

帰国時には、ニームケーキの残り8Kg、ニームオイル(いずれも市販品)、自分達がジプシー村からの種の核を圧搾して作った自家製ニームオイルも母国へ...。

ミャンマーにニームは自生していますが、どこにでもあると思っているが、良く考えると、自分達の研修地周辺にニームがあるかどうか分からないし、種がいつ採れるのかも意識したことがないから分からない、ということで、市販のニーム製品をまず試そう、ということになったわけです。

日本では、『強烈に臭い』というニームも、野生児(?)の彼らにとっては「いい匂い」らしく、帰る頃にはすっかりニームファンになっていました。あれだけ強烈な匂いのニームケーキを、全員が率先して自分の荷物に衣類と一緒に入れてました。(笑)

現在、彼らは、研修地となる田舎の野原に、自分達が住んで学習を続けるための竹の家を作り、川の土手や水門を作ったり、敷地用の柵を作るなど、とてつもない課題に取り組んでいます。どこまでやれるかは分かりません。期間中、この野原から外出することもせず、「何もないところで自力で頑張る」サバイバルが課題です。
最低限の食料は用意ましたが、きっと彼らのことですから、その他に食べられるものを何とか手に入れようと、畑ぐらいはさっさと作っているのではと思うところです。

また、竹の家の屋根と壁は全てヤシの葉っぱですが、虫が来ないようにニームをスプレーする、と言っていました。私達は、3月末で帰国しましたが、4月6日現在までに、家はほぼ完成しものと思われます。(写真は4月1日頃撮影)

ミャンマーでは、ニームはタマー(という発音に聞こえる)というらしく、2種類あるとか。彼らと車で田舎道を移動中、「あ~あれがニームです」、「あ、それもです」、と森を指差して教えてくれたのですが、あいにく野生の木を見極める目を持っておらず、私にはよく分かりませんでした。
唯一、写真撮影に成功したのが、パゴダに立ち寄った時、境内に生えていたニームの花です。大きな木でした。この地域(中部乾燥地)にはたくさん自生していて、街路樹が全てニームというところもありました。

手の届くような比較的低い木の葉っぱは、ギザギザしていて、日本の製品紹介に出ている葉っぱや、私達がカンボジアやスリラ ンカの村で手に入れたものと似ています。味も。しかし、この写真の花の木は大木で、枝に手が到底届きそうもないような高さでしたが、この葉っぱは、ギザ ギザがありません。スリランカの村からの葉に似てます。(下記スリランカ・北部の村支援からの情報をご参照下さい)
残念ながら、この大木の葉っぱの味は分かりませんでしたが、種類が違うのか、成木になると葉も違うのか、いろいろな憶測で会話ははずみました。


<スリランカ・北部の村支援からの情報>

スリランカの村支援では、ジプシー村を主にニームプロジェクトの対象としていましたが、3月上旬、北部のほかの村を訪ねたときのことです。村でニームの話題になり、ニームは国に3種類あり、薬用の木は、村の外や国外に出すことは許可がなければいけないとか。アーユルベーダの薬木は国が管理している、ということらしいのです。

前回お知らせしたように、薬木は、特別に栽培されていて普通のニームとは異なる、という情報は本当かもしれません。しかし、この村に、たまたまなのか?国が管理してるのか?やはり、その辺に生えている木だからなのか?「これがそうです」と、村の人が”取っちゃいけない”という木の葉を見せてくれました。(苦笑)

葉っぱが違うのです。小さいギザギザがなく、前述のミャンマーの大木ニームの葉と酷似してます。乾燥した後の匂いを嗅ぐと、ギザギザの葉っぱと少し違うようです。
いずれもいい匂いですが、こちらの方が優しい香り。同じ苦味があるのですが、意外に薬木の方がまろやかで薄く、口に残りません。

私達にとっては、まだまだ謎だらけのニームですが、どんなに時間がかかっても、失敗しても成功しても、自分達の手と足、五感ぜんぶ使ってその実態を明かし(?!...大げさ?)、村の人の自立や生活・農作業に役立てられるものにできることを願って、歩み続けます。

この事業に関心を持つ仲間が現れ、2月にはその応援グループ(長渕さん達)がスリランカ人道支援&研修にも参加したことから、ますますニームGreenプロジェクトに力が入るようになりました。現地の人たちとの協力体制も更に深めつつ、自然と貧しい村の人たちとの関わりで行う事業ですから、しっかり腰をすえて地道に頑張っていかなければいけません。

<ジプシー村からの苗>
ところで、前回お伝えした、支援先のジプシー村からセンターに持ち帰った苗ですが、種から育てた、という苗の中でも、全部がそろって大きくなったわけではなかったようです。3月に、日本人のボランティアも研修修了と同時に帰国をしましたので、その直前に、育苗ポットで17cmぐらいに育ったニームをセンターの庭に37本植えてきました。
薬木かどうかは定かではありませんが、植樹できる大きさまで育てなければいけません。ひとまずポットから移したというわけです。次回訪問時に様子をみるのが楽しみです。大きく育つといいなぁ。